何十年もの間、テーマパークの成功は、年間の来場者数という一つの数字で測られてきました。来場者が多ければ多いほど、事業パフォーマンスは高まり、競争力も向上し、市場価値も高まると考えられていました。そのため、マーケティングキャンペーンやプロモーション、新たなアトラクションへの投資を通じて、来場者数を増やすことが成長の主要な手段とされてきました。
しかし近年、世界を代表するエンターテインメント企業の動向を見ると、興味深い変化が起きています。成熟市場の一部では、来場者数がほぼ横ばい、あるいはわずかに減少しているにもかかわらず、売上高は堅調な成長を続けています。
その理由は、より多くのチケットを販売することではありません。一人ひとりの来場者から生み出す価値を高めることにあります。
これは、現代のテーマパークが持続的な成長を実現する方法における、大きな変化です。
Per-cap spending:来場者数より重要な指標
効率的に運営されているテーマパークでは、財務・経営チームは単に「何人がパークに入場したか」だけを追うのではなく、「一人の来場者が1回の訪問でいくら消費したか」にも注目しています。これが per-capita spending(来場者一人当たりの消費額)です。
来場者数が単に集客規模を示す指標であるのに対し、per-capita spendingは、1回の訪問からどれだけの価値を生み出せているかを示します。この指標には、より多くの体験へと来場者を誘導し、追加購入を促し、滞在中に自然と消費したくなるような体験を提供できているかが反映されます。
新規顧客の獲得だけに依存するのではなく、成功している運営会社は、既存の来場者一人ひとりから生み出す価値を高めることに注力しています。このアプローチにより、来場者数が大きく変化しなくても、売上を伸ばすことが可能になります。
世界の主要なエンターテインメント企業の最近の動向を見ても、この傾向は明確になっています。一部の市場で来場者数の伸びが限定的であっても、より高価格帯のチケット商品、ファストレーンやVIPアクセスなどの優先体験、さらに飲食やショッピング、パーク内のその他のサービスへの支出増加によって、売上を伸ばすことができます。
つまり、持続的な成長は、単にパークに入場する人を増やすことではなく、一人ひとりの来場者から生み出す価値を最大化することによって実現されます。
成熟したテーマパークの4つの収益レイヤー
世界を代表するテーマパークのビジネスモデルを見ると、相互に補完し合う4つの主要な収益レイヤーが存在します。
1. 入場料(Admission)
入場料は依然としてビジネスの基盤です。来場者の体験はチケットの購入から始まるため、入場料は最初の、そして不可欠な収益源となります。
しかし、成熟した運営会社にとって、チケットは次第に「目的地」ではなく「出発点」として捉えられるようになっています。
一枚のチケットは、来場者の滞在中にさまざまな商品や体験を通じて、さらなる価値を生み出すための入口となります。
2. フード&ビバレッジ、リテール(F&B & Retail)
飲食とリテールは、テーマパークにおける重要な収益源の一つとなっています。
入場料とは異なり、これらの支出はパークでの体験に直接影響されます。テーマ性のあるレストラン、魅力的なフードメニュー、限定グッズ、利便性の高いショップなどは、来場者が滞在中に自然に消費することを促します。
テーマパークがより没入感のある体験や独自の世界観を追求するようになる中で、F&Bとリテールは、一人当たりの来場価値を高めるうえでますます重要な役割を担っています。
3. プレミアム体験(Premium Experience)
優先アクセス、VIPサービス、限定イベント、人数限定の特別体験などのプレミアム商品は、さらなる収益機会を生み出します。
これらの商品は、大規模な物理的インフラの拡張を必ずしも必要とせず、体験価値を高めることができます。利便性や独占性を求める来場者に対して差別化された選択肢を提供することで、運営会社は追加収益を生み出しながら、全体的な顧客体験も向上させることができます。
4. メンバーシップ&シーズンパス(Membership & Season Pass)
メンバーシップやシーズンパスは、一度きりの取引を長期的な顧客関係へと変える仕組みです。
継続的な収益を生み出すだけでなく、これらのプログラムを通じて顧客データを蓄積し、来場者の行動や嗜好をより深く理解することができます。こうしたデータは、体験のパーソナライズ、エンゲージメントの向上、そして再来園の促進に活用できます。
競争が激しくなる中で、顧客との長期的な関係を構築することは、一回限りのチケット販売だけに依存するよりも大きな戦略的優位性となります。
ベトナムを含む多くの新興市場では、現在もテーマパークの収益の大部分が入場料と一部の飲食サービスから生み出されています。しかし、収益性をさらに高める余地は、第3層と第4層の収益モデルにあります。プレミアム体験やメンバーシップ・エコシステムの構築は、必ずしも大規模な物理的インフラへの投資から始める必要はありません。むしろ、体験設計、ストーリーテリング、ブランド、そして顧客とのエンゲージメントへの投資が重要になります。
なぜ意思決定者にとって重要なのか
テーマパークが成功をどのように測定するかは、最終的に投資の方向性を決定します。
もし来場者数が主要なKPIであり続けるなら、経営判断は広告、チケットプロモーション、新たなアトラクションへの投資など、より多くの来場者を獲得することに自然と集中します。
しかし、一人当たりの売上を戦略的な指標として捉えるようになると、投資に対する考え方そのものが変わります。
来場者により長く滞在してもらうにはどうすればよいか。
より多くの体験を楽しんでもらうにはどうすればよいか。
より自然に消費してもらうにはどうすればよいか。
より頻繁に再来園してもらうにはどうすればよいか。
これらはもはや単なるオペレーション上の問いではありません。収益性と長期的な成長に直接関わる、戦略的なビジネス上の問いです。
最終的に、最も成功しているテーマパークとは、必ずしも最も多くの来場者を集める場所ではありません。
それは、一人ひとりの来場者から生み出す価値を最大化する場所です。一回の訪問を単なるチケット収益で終わらせず、複数の収益機会へとつなげる、多層型のビジネスモデルを構築しています。
エンターテインメント業界の競争がますます激しくなる中、入場チケットはもはやゴールではありません。それは、顧客体験の始まりにすぎないのです。






